オードリーのアート日記:オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠

 

オフィスビルの立ち並ぶ丸ノ内で一際目立つ赤煉瓦の建物、三菱一号館美術館。美術館のある丸の内ブリックスクエアにはゆったりとした中庭があり、都会のオアシスと呼べるような場所です。現在、この三菱一号館美術館では、フランス、パリのオランジュリー美術館がルノワールとセザンヌという印象派、ポスト印象派の画家に初めて同時にフォーカスし、企画・監修をした世界巡回展が開催されています。この展覧会はオランジュリー美術館とオルセー美術館の協力により、ミラノ、マルティニ(スイス)、香港を経て、日本では唯一の開催となります。

出品点数は52点。ルノワールとセザンヌ、それに彼ら2人から影響を受けたピカソの作品も出る、ヨーロッパ絵好きにはたまらない展覧会! ルノワールとセザンヌは、肖像画や静物画、風景画といったジャンルごとに作品が対比するように並べられ、同じモチーフやテーマによって2人の巨匠の特徴を見比べることができます。

例えば、テーブルの上に置かれた花瓶に入った花を描いた静物画。セザンヌはモチーフの輪郭線をひくことで形態を強調し、卓上にある静物が主張しているように見えます。一方、ルノワールは、ボリューム感のある花と空気が溶け込むように表現しながら、その存在感を引き出しています。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《ガブリエルとジャン》1895-1896 年、油彩・カンヴァス、オランジュリー美術館 © GrandPalaisRmn (musée de l’Orangerie) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

人物画になると、より2人の特徴が際立ちます。ルノワールの《ガブリエルとジャン》は、ルノワールの妻アリーヌのいとこ、ガブリエル・ルナールと、ルノワールの息子ジャンが人形で遊ぶさまが描かれています。愛情溢れる姿が微笑ましく、2人の紅潮した頬も印象的。あたたかみの感じられる日常の一場面が切り取られています。

ポール・セザンヌ《セザンヌ夫人の肖像》1885-1895 年、油彩・カンヴァス、オランジュリー美術館 © GrandPalaisRmn (musée de l’Orangerie) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF

そのルノワールの絵と対照的なのは、セザンヌの《セザンヌ夫人の肖像》。妻をモデルにした肖像画は全体に寒色が用いられ、顔の陰影は青と緑が混ざった色で表現されています。セザンヌは客観性を重んじ、人物画においてもモデルの実在に意識を向けています。また、この絵では夫人の背景の絵の具は薄く、右上部分は地塗りが剥き出しになっています。これもモデルの存在を強調させる手段のひとつとなっていて、セザンヌは他の絵においても同じ手法を使っています。

こちらの壁面はルノワールの代表作《ピアノの前の少女たち》を中心に、それと近い構図の作品が並んでいます。ルノワールと言えば、形態が溶け出すような印象派の技法のイメージが強かったのですが、そこから明確な線描を重んじる様式へ回帰しました。こうして展示されることで、時期によって描き方の違いが一目瞭然です。そして、それらの作品に見られる多様な描写から、ルノワールが多くの画家の表現を貪欲に吸収し、アウトプットしていたことがわかります。また写真はないのですが、ルノワール、セザンヌを見た後のピカソの絵は、2人の巨匠に続く流れが感じられました。

さすがオランジュリー美術館が企画・監修をした世界巡回展だけあって、巨匠の代表作とじっくり向き合うことができました。猛暑が続いていますが、皆さんも涼しい美術館で贅沢な時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

オランジュリー美術館 オルセー美術館 コレクションより
ルノワール×セザンヌ―モダンを拓いた2人の巨匠

2025年5月29日(木)~9月7日(日)
休館日:月曜日 ※但し、祝日の場合、トークフリーデー[8月25日]、9月1日は開館
10:00-18:00(祝日を除く金曜日と第2水曜日、9月1日~9月7日は20時まで)
                             
【夏の特別夜間開館】8月の毎週土曜日も20時まで開館 ※入館は閉館の30分前まで
三菱一号館美術館

https://mimt.jp/ex/renoir-cezanne/

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