オードリーのアート日記:知覚の大霊廟をめざして——三上晴子のインタラクティヴ・インスタレーション

デザイン:寺井恵司

情報社会と身体をテーマとした大規模なインスタレーション作品を発表し、近年再評価が高まっているアーティスト、三上晴子の個展が、NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]で開催されています。東京オペラシティタワーに位置するICCは、NTT東日本が運営する文化施設です。三上はICCのプレ開館期間より、さまざまなかたちで発表してきました。

三上ならではの大規模なインタラクティヴ作品を再展示する機会は限られていますが、同展では大型インスタレーション作品3点を同時に展示!これは国内外でも初の試みとなります。
私は今回三上作品を初めて鑑賞しました。「インタラクティヴ・インスタレーションとは?」と考えつつ訪れましたが、その圧倒的な迫力に驚かされました。
「眼は単に視るものではなく、耳は単に聴くものではない。すなわち、耳で視て、鼻で聴いて、眼で触ることが可能である」。そう本人が記している通り、メディアテクノロジーを駆使した作品は、五感に強烈に訴えかけます。
体感しないとわからない三上作品の凄さを言葉で説明するのが難しいのですが、いくつか印象的な作品を紹介します。

《欲望のコード》は、「蠢く壁面」「多視点を持った触覚的サーチアーム」「巡視する複眼スクリーン」という3つの要素から構成される大型インタラクティヴ・インスタレーションです。暗闇の中、蜂の巣のようにも、昆虫の複眼のようにも見える「巡視する複眼スクリーン」にはさまざまな映像が流れ、「蠢く壁面」に取り付けられたストラクチャーのカメラで捉えられた鑑賞者の姿も映し出されます。特に驚いたのは「蠢く壁面」です。自分の動きに反応し、まるでパソコンを叩きつけるような打鍵音が展示空間に響き渡ります。アートといえば視覚的なイメージが強いですが、本作はとりわけ聴覚を刺激しました。

三上晴子《欲望のコード》「巡視する複眼スクリーン」2010/2011年 撮影:木奥恵三 写真提供:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

三上晴子《欲望のコード》「蠢く壁面」2010/2011年 撮影:木奥恵三 写真提供:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

三上晴子《欲望のコード》「蠢く壁面」と「多視点を持った触覚的サーチアーム」2010/2011年 撮影:木奥恵三 写真提供:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

《gravicells—重力と抵抗》は、パネルを敷き詰めた床の上に足を踏み入れると、その身体の重さ、傾き、動きの速度に床下のセンサーが反応し、力の場の変化が「線の歪み」や「音」として表現されます。自重で沈む床とそれが可視化により、普段は意識することのない重力を再認識させられます。

三上晴子+市川創太《gravicells[グラヴィセルズ]─重力と抵抗》 2004年– 撮影:木奥恵三 写真提供:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]

三上は展示の機会があるたびに最新の技術を取り入れ、作品をアップデートすることに極めて積極的でした。そのため、彼女の没後も、委嘱元である山口情報芸術センター  (YCAM)や当時の作品制作関係者によって、修復や一部再制作が行なわれています。本当はこのアーカイブ映像で見た予約制の作品も体験したかったのですが、予約を失念していたために今回はお預けに…。これから行かれる方には事前予約をおすすめします! ※ 体験希望日の7日前よりオンライン予約受付開始

「現在の情報化された環境と知覚に生きるわたしたちの新たな欲望とはなにか」という問いを突き付ける三上晴子の作品は、体験者の感覚を揺さぶり、その存在を浮き彫りにします。まさに身体全体に響く体験。ぜひ予約作品も含めて体感してほしい展覧会です。

知覚の大霊廟をめざして——三上晴子のインタラクティヴ・インスタレーション

2025年12月13日(土)〜2026年3月8日(日)
休館日:毎週月曜日(月曜日が祝休日の場合は翌日),ビル保守点検日(2/8[日])
開館時間:11:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで)                    
NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]  ギャラリーA,B
https://www.ntticc.or.jp/ja/exhibitions/2025/toward-a-mausoleum-of-perception-mikami-seiko-s-Interactive-art-installations/

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