8月もまもなく終わろうとしているのに、まだ残暑が続きますね。果たして涼しい秋を迎えられるのでしょうか…。そんな8月最終週、美の起原で始まったU-kuさんの個展にお邪魔してきました。

U-ku個展「自己の抽出」展示風景。大胆な余白と水彩の筆致が目を引く
水彩特有の滲み、透明感、揺らめく色彩。その美しさを、白や金の余白が際立たせて完成する最新作を堪能できる展覧会です。初日の夜に開催された“WaiWai-NIGHT”は大盛況でした。

左:《空に溶ける声》 右:《漂う意思》 画面と側面に効果的に金が使われている2作品
「どうやってこんなふうに描くのですか?」と尋ねると、U-kuさんは笑顔でこう答えてくれました。
「コントロールして描いているというより、水彩に遊ばれている感覚なんです(笑)。毎回、絵の具が意図せず変化するのが楽しくて。そのあと、どこを余白にするかを考えながら塗りつぶしていきます。予期せぬ偶然から選び取り、一歩ずつ進めていく過程は、自分の歩んできた道にも重なりますね」

展覧会のタイトルにもなっている《自己の抽出》。強弱のある線と柔らかな混色が新たな変化を感じさせる
作品と自身との重なりがとりわけ強く感じられるのが、個展タイトルでもある《自己の抽出》。ランダムに浮かぶドットや線は、これまでの色彩の面を主体とした作品と比べ、大胆な筆致が際立っています。まるで人生における出会いと別れの場面のよう。そして水彩以外の部分を白や箔で塗りつぶすことで、偶然から選び取った要素が抽出され、色や形がより鮮明に浮かび上がります。

《自己の抽出》部分。近くで見ると白の絵の具を重ね、水彩の形が切り抜かれて際立っているのがわかる
水彩は紙に染み込むため、しばしば「力強さに欠ける」と見られがちです。しかしU-kuさんは、パルプベースのパネルを支持体に用いることで、水彩の特性を生かしつつ重ねや盛り上げを可能にしています。さらに、二層目で厚みのある余白を構築することにより、一層目の水彩が際立ち、繊細さと力強さを兼ね備えた画面に仕上がっています。

左:《Dance floor》 右:《Being to Becoming》
U-kuさんといえば「青」のイメージが強いですが、近年の作品では他の色を取り入れることで、より青の魅力を引き立てています。余白の色が変わると水彩の印象も変化し、白では色彩を鮮やかに際立たせ、金では作品に力強さを増しています。
展覧会は9月6日まで。残暑の中に爽やかな風を吹き込むようなU-kuさんの作品を、ぜひご覧ください。
U-ku個展「自己の抽出」
2025年8月29日(金)~9月6日(土)日曜休廊
12:00〜18:30(最終日16:00)
美の起原
WEB展示