3年ぶりの開催となった今回の「美の起原展」は、応募者数340名、応募総数469点にのぼり、過去最高の応募数を記録しました。
20代から80代にわたる幅広い世代から、本公募展の特色である多様な平面表現に挑戦した、熱意あふれる力作が寄せられ、一次審査から選考は極めて難航いたしました。
厳正なる審査の結果、独創的な表現力と、将来の可能性を大いに期待させる優れた作品が選出されております。
大賞

神戸勝史「白華の刻」
審査員講評
前回、審査員賞を贈らせていただいた時から作品のもつ魅力に惹かれていた作家さんです。今回の大賞受賞は文句なしと言えるでしょう。白土で繊細なマチエールを施した上に、岩絵具の青と箔の織りなす調和が美しさと重厚感を生んでいます。それ故に審査会場に並べられた作品の中でも強い存在感を放っていました。仏教経典を題材に、水流紋など多様な文様を組み合わせることで、琳派の装飾性を継承しつつ、神話的な物語性を現代風に表した秀作だと思います。国内外の遺跡や歴史を丹念に取材し、日々作品と向き合う神戸さんの真摯な姿勢が作品から強く伝わってきます。(大杉浩司)
近年、一貫して神戸さんがモチーフにしているという白い鹿。尾形光琳の国宝《紅白梅図屏風》を想起させる水紋。凛と咲く白百合に、画面を覆い尽くす生命感あふれる植物たち。さまざまな要素が詰め込まれているにもかかわらず、作品を目にした瞬間、シンプルに美しいと感じました。審査員を受賞された前回から3 年。作品の純度が確実に高まっていました。納得の大賞受賞です。これから神戸さんの作品がさらに進化・・・いや、深化するのを期待しております。(とに~)
準大賞

山西なつ美「光をかさねて」
審査員講評
一見すると、可憐な少女の姿が印象的ですが、目を凝らすと少女のシルエットや背景には漆の表現技法が巧みに生かされていることに驚かされます。イラストレーションを思わせる現代的な少女像と、縄文時代から現代に受け継がれてきた歴史をもつ漆芸との対比が強い印象を残します。異なる色の漆を何層にも重ねて研ぎ出された不定形な模様を背景やモチーフに用いた表現は、少女の抱く未来への夢や漠然とした不安という心情を映し出しているのでしょうか。漆の扱い方から見ても、大学で漆工を学び、福井の塗師のもとで漆の性質や技法をしっかりと身に着けた経験をもとに、現代に生きる自身の表現として昇華させた山西さんならではの作品だと思いました。(大杉浩司)
特別賞

古川右京「Silva Nocturna」
審査員講評
こちらを見つめる現代的なファッションに身を包んだ女性。よく見ると、その身体の一部が背景に溶け込んでおり、思わずギョッとさせられる。
なるほど、デジタルで作成された画像なのか。そう思い、近づいてみると油彩で、それもデジタルとはむしろ真逆のアナログな古典的な技法で描かれており、再びギョッとさせられた。
きっとこの絵には他にも作者による仕掛けがあるに違いない。なぜ、女性は夜の森にいるのか?なぜ、露出性の高い服なのか?タイトルに隠された意味は?考察が止まらなくなった。(とに~)
奨励賞

齋藤桃乃「石ころマチエール3」
審査員講評
今回の入選作の中で、圧倒的にカワイイ作品でした。「かわいいだけじゃダメですか?」とばかりに、カワイイに全振りした作品なのかと思いきや。デジタル捺染という革新的な技法と、伝統的な手染めの技法をあえて重ね合わせていたり。金箔を巧みに用いて、工芸的な面白さを狙ってみたり。作品に込めたコンセプトも含めて、細部にまでこだわり抜かれて制作されていました。誉め言葉として、最上級にあざとかわいい作品です。
(とに~)

不二「風穴」
審査員講評
何度か不二さんの作品を拝見してきましたが、漆という古典技法を使い現代に生きる自身の作品として成立させようとする試行錯誤の軌跡を見ることができます。大学で日本画を学び、輪島の漆芸技術研究所で漆の技法を修め、現在は仏像、仏具、太鼓の漆工を生業にされている不二さんならではの作品です。本作では漆を砥ぎ出して現れる不定形な模様が混沌と画面全体を覆い、その中央にぽっかりと空けられた黒い空洞が現れます。「漆黒」という言葉は深く艶を湛え、光を吸い込むような黒を意味しますが、漆で描かれた黒い空洞は果てしない宇宙への入り口を思わせるようです。そこには作家が日々手探りで追い求める自己表現への希望と不安が投影されているのでしょうか。(大杉浩司)

李丹「黒羽ノ庭」
審査員講評
中国生まれの李さんは日本の美術大学で日本画を学び、東アジアの古代造形から着想をへて日本画独自の素材や技法で自己表現を追求している作家です。作品では花籠と植物が中央に据えられ、その背後には不気味さを帯びた黒い羽根がそれを覆いかぶさるように描かれています。一見すると身近な静物画でありながら、画面からは作者自身と正面から向き合い、現実を生き抜く人間の記憶や感情の揺らぎが込められているようです。また、素材として使われている麻紙ならではのしなやかな繊維の表情、墨の濃淡、箔の質感が効果的に生かされている点も作品の魅力だと思います。(大杉浩司)

劉毅「叫ぶ花」
審査員講評
古今東西、多くの芸術家が植物を主題にした絵画を描いてきた。植物の造形に惹かれて描いたものであったり、植物の生命力を表現しようと描いたものであったり。ところが、劉毅さんの描く植物はそれらと一線を画している。人の奥底にある欲望や感情といったものを植物の姿に重ね合わせているそうだ。
確かに、一般的な植物を描いた絵と違って、鑑賞して心が穏やかになることはありませんでした。『ザ・ノンフィクション』のようなドキュメンタリーを観終わった時の感覚に近いものがありました。(とに~)
審査員賞

こだんみほ「夜海の月」
審査員講評
建築素材でもあるタイルの持つ色、艶、模様に魅せられ、それをレジンで再現して作品に生かすこだんさんの作品は、制作を重ねる毎に進化し洗練されているように感じます。今回の作品は大賞に比肩する完成度を備えた作品だと思いました。曲線を描きながら螺旋状に伸びる階段を見上げる構図だけでも美しいのですが、そこにブルーの輝きを放つタイルが張り巡らされています。透明感を湛えたブルーの輝きと天空へと伸びる螺旋階段との構成が海の生き物を思わせるような幻想的で不思議な空間を創りたした逸品です。改めてこの作品に審査員としての賞をお贈りできたことをたいへん嬉しく誇りに感じています。早速モチーフとなった建築空間を訪ねてみたいと思いました。(大杉浩司)

本郷瑞希「白い帽子」
審査員講評
旅行中にたまたま撮影した写真の中の帽子の白さに目を奪われた。その作者の衝動的な感動から生まれたという1 枚です。
そこに描かれているのは、作者以外にとってはあまりにも何気ない日常の1 コマかもしれません。しかし、画面全体から本郷さんの瑞々しい感情がひしひしと伝わり、彼女の感動を共有することができました。絵画を鑑賞したというよりも、名句や名歌を味わった感覚に近いものがあります。
何気ない日常の中にも、感動はある。そんな根源的なことに気づかせてくれる作品でした。
これから本郷さんが何に心を動かされ、どんな絵を描くのでしょうか。自分の日常に新たな楽しみが1 つ増えました。(とに~)
佳作

河本絢香「ばらの夢」

冨田淳「The back of the eyes」

林リウイチ「神話」

HARUNA SHIKATA「Overwrite73」

門田奈々「今帰り来む」
応募数
469作品・340名の応募・入選50作品(50名)
下記の日程で入選作品を展示します。
第12回 美の起原展 入選作品展~横浜みなとみらい
会期 :2026年8月25日(火)~8月31日(月)
初日 :8/25火15:00~18:30
8/26水~8/30日 11:00~18:30
最終日:8/31月 11:00~16:00 ※B室15:00迄
会場 :みなとみらいギャラリー
住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい2丁目3番5号 クイーンズスクエア横浜クイーンモール2階
第12回 美の起原展 受賞作品展~銀座
会期:2026年9月2日(水)~12日(土)
休廊日:日曜
時間:12:00~18:30(最終日16:00)
会場:銀座画廊 美の起原
住所:東京都中央区銀座8-4-2 高木屋ビル1階

