オードリーのアート日記:企画展「デザインの先生」

東京ミッドタウン内にある21_21 DESIGN SIGHTでは、現在、企画展「デザインの先生」が開催されています。本展は、デザインを通して多様な視座を示してくれた巨匠たちの活動を振り返る試みです。ここで「デザインの先生」としてフォーカスされているのは、ブルーノ・ムナーリ、マックス・ビル、アキッレ・カスティリオーニ、オトル・アイヒャー、エンツォ・マーリ、ディーター・ラムスの6名。

会場入り口部分。6名のデザインの先生を紹介する大きなバナーがお出迎え

​彼らに共通するのは、単なる商業主義的な「かたち」の追求ではなく、ヒューマニティを軸に据え、環境までをも見据えた営みとしてプロジェクトを捉えていた点です。展覧会ディレクターを務めるデザインジャーナリストの川上典李子さんとキュレーター、ライターの田代かおるさんのメッセージからも、その揺るぎない姿勢が伝わってきます。会場では、彼らが生んだデザインの名作とともに、その思想や言葉が紹介されています。なかでも特に印象深かったのは、オトル・アイヒャーとディーター・ラムスの展示です。​

オトル・アイヒャーの展示スペース。作品だけでなく、思想や活動を記したキャプションも必読

アイヒャーは、1972年ミュンヘン・オリンピックのデザイン統括や、フランクフルト国際空港の視覚誘導システムなど、20世紀のデザイン史に不朽の足跡を残した巨匠です。戦後ドイツの復興期において、教育の拠点となる「ウルム造形大学」の創立に尽力したことでも知られています。保養地イズニー・イム・アルゴイの「環境ピクトグラム」や、自身の活動拠点であったローティスで生まれたフォント「Rotis」は、その土地の環境と深く結びついています。キャプションにあった、知の情報伝達としての「ビジュアル・コミュニケーション」という言葉が強く心に残りました。

ディーター・ラムスの展示スペース。壁にはプロダクトのエスキースのコピーが展示されている

一方のディーター・ラムスは、ドイツの工業デザインを象徴するブラウン社で数々の名作を手がけた人物です。彼が導き出した「良いデザインの10ヶ条」とともに、優れたプロダクトを一度に鑑賞できるのは、非常に贅沢な体験でした。長い年月が経っても古びないデザインは、彼の哲学の結晶がゆえでしょう。

「良いデザインの10ヶ条」。展示作品はまさにこれが体現されている

メイン会場を抜けた出口付近の通路には、カスティリオーニのデザインに対する姿勢が凝縮された言葉が並んでいます。短くも力強いメッセージは、最後までこちらの思考を揺さぶり続けます。

最後の通路の言葉を読んで、アートとデザインとの違いについても考えてしまう

​「デザインの先生」の作品と思想に触れることで、デザインを通じて、社会に対する「問い」やメッセージそのものについて考えさせられました。優れたデザインと、そこにたどり着くまでの軌跡を辿ることで、日常に対する視点に大いなる刺激を与えてくれる展覧会です。

企画展「デザインの先生」

2025年11月21日 (金) – 2026年3月 8日 (日)
休館日:火曜日、年末年始(12月27日 – 1月3日)
10:00〜19:00 ※入場は18:30まで                    
21_21 DESIGN SIGHT
https://www.2121designsight.jp/program/design_maestros/

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