NHK大河ドラマの影響もあって、浮世絵に興味を持つ人が増えているのではないでしょうか?
そんな人にうってつけの展覧会が、上野の森美術館で開催中の五大浮世絵師展です。
女性を優麗に描いた喜多川歌麿、劇的な役者絵で人気を博した東洲斎写楽、風景・花鳥・人物と森羅万象を独自に
表現した葛飾北斎、名所絵を中心に浮世絵に新風を吹き込んだ歌川広重、そのユーモラスな画風で大いに存在感を
発揮した歌川国芳。この5人の代表的な浮世絵師の作品を一度に見ることができます!
会場に入ると、まずは五大浮世絵師の代表的な浮世絵のパネルがお出迎え。これは期待が高まります!

喜多川歌麿の作品展示の様子
まずは歌麿から。オレンジの壁面には、美人画の第一人者と言われる歌麿の女性たちがズラリと並びます。
顔面がクローズアップされる大首絵にしても、群像表現の三枚続の浮世絵にしても、女性の表情や仕草が繊細で
グッと引き込まれてしまうのが、歌麿の美人画。見ていてほれぼれします。

東洲斎写楽の作品展示の様子
次に続くのが写楽。江戸三座の役者を題材にした作品で鮮烈なデビューを飾り、寛政6年(1794)5月から
翌年1月までの10ヵ月間に約145点の錦絵を残した絵師として知られる写楽の大首絵が並ぶ壁面は壮観です。
写楽は取材した芝居の上演時期によって、4期の作画期に分けて作風を分類することができますが、
1期の大首絵は役者の心の内が顔に出ていて、初期の勢いが感じられます。それが出品作の半分以上も!

葛飾北斎《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》
そして北斎へ。個人的にはここが本当に贅沢な空間で、一人で盛り上がってしまいました(笑)。
名作の中でも、例えば、新千円札の裏絵にもなっている《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》。
前景に大きな波と一艘の船。雄大な自然に人間が立ち向かうさまが力強く表現されています。とにかくすごい!
その迫力ある場面と背景の富士山のバランスがまた秀逸で。北斎の圧倒的な構成力を思い知らされます。

葛飾北斎《北斎漫画》
もうひとつ、北斎の展示で嬉しかったのは、《北斎漫画》全十五編が出ていたこと。
冊子仕立てなので全ページが見られるわけではありませんが、その筆捌きや表現の違いを見ることができます。
コミカルだったり、写実的だったり、簡略化されていたり、これでもかという描写力。ため息が出ますね。

歌川広重《江戸名所 四季の眺 高輪月の景》
そして北斎から広重に。風景画の絵師として知られる広重の浮世絵を見ていると、旅行に行った気分になります。
もしかすると当時の人たちも、こうした浮世絵を見ながらそう思ったのでしょうか。想像は膨らみます。
また、≪名所江戸百景≫シリーズは、鑑賞者の視点を動かすような画面構成が特徴的です。
見ていて飽きさせない、さすが晩年の傑作。どの絵もまさに情緒溢れる一瞬を切り取っています。

歌川国芳の作品展示の様子
そして最後を飾るのが国芳。見よ!とばかりの迫力あるこの展示。
広重と同い年ですが、作風は全く違うタイプです。その武者絵や戯画はユーモラスで、一度見たら忘れられません。
他の4人に比べると遅れて評価されましたが、今や国芳と言えば国内外で浮世絵を代表する絵師となっています。
いわゆる王道とは一味違う浮世絵の魅力があります。いや、もしかしたら王道になったかも?
あと、音声ガイドが無料であったのもよかったです。ケータイで二次元コードをかざすだけで、
歌舞伎俳優の尾上松也さんの音声ガイドナビゲートによって鑑賞ポイントを教えてくれます。
(ただし、イヤホンをお忘れなく!)
浮世絵に詳しくなくて知りたいと思っている人、そしてもっと知りたい人にも行ってほしい展覧会です!
五大浮世絵師展―歌麿 写楽 北斎 広重 国芳
2025年5月27日(火)~7月6日(日)※休館日なし
10:00〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
上野の森美術館
https://www.5ukiyoeshi.jp/